皆さんは、日々の中で、会社の上司や部下、子育てや夫婦、両親などの家族、また友人などとの人間関係について、どのようにお感じでしょうか?

人間関係で少なくとも何かしら悩んだことがある方の方が多いかとは思いますが、
できればストレスなく人付き合いしたい、悩みを減らしたい、と思う方も多いのではと思います。

そこで、今日は、心理学者であるアルフレッド・アドラーが提唱した、アドラー心理学に出てくる「勇気づけ」を使って、全ての人間関係がどうやったらうまくいくのか、について話していきたいと思います。

アドラー心理学とは

アドラー心理学とは、オーストリアで生まれた心理学者のアルフレッド・アドラーが提唱した心理学です。
主に、「勇気」の心理学、とも言われています。
また、人は原因に起因して動くのではなく、必ず目的をもって生きるもの、とも説いています。

アドラー心理学の理論は、

「自己決定論」(自分の人生は自分で決められる)
「目的論」(人間の行動は、原因があるのではなく、全て、どうしたいのか、という未来の目的がある)
「全体論」(人間は感情も理性も全てひっくるめてひとつであり、部分部分で考えられない)
「認知論」(人間は自分独自の視点や考え方を通して、現実に起きることを意味づけ、行動している)
「対人関係論」(人の行動や感情は、相手との関係性で変わる
全ての悩みは、対人関係の悩みである)

の5つの要素にまとめることができます。

2013年に日本の哲学者が書いた『嫌われる勇気──自己啓発の源流「アドラーの教え」』は20万部を超えるベストセラーにまでなり、それから注目されるようになった考え方でもあります。

アドラー心理学のいう「勇気づけ」とは

その中でも、アドラーは「勇気づけ」という言葉を出し、「勇気づけ」が人間関係をよくする糸口になるとしています。
では、彼のいう「勇気づけ」とは、具体的にどういうことでしょうか?

「勇気づけ」と「共同体感覚」

アドラーが言うには、「勇気づけ」とは、人に「困難を克服する活力を与えること」です。

「勇気づけ」は自分自身が困難にぶつかったときにも、より良い未来に向かっていくために必要なことです。
同じく、人は、この「勇気づけ」を自分以外の人たちにも与えることで、その人が未来の目的に向かって進む一歩をサポートすることができるとしています。

学校や職場、家族など、社会のどこかに自分は属していて、そことの繋がりを感じられたり、他人に関心がある状態である「共同体感覚」をお互いに持っていると、「勇気づけ」が生まれやすくなるとしています。

NORIKO

部下との関係をよくしたい、と感じた過去がありました。当時は、どうしても上司として、「部下ならこうすべき」などの主観に囚われて、タテの関係しか描けませんでした。
しかし、その後、相手をよく観察して、相手が何を求めているのか、相手の立場や視点に立って考えることで、「自分に何ができるだろうか」と素直に考えられるようになったのを今でもよく覚えています。
これがまさに、「共同体感覚」が自分の中で生まれ、部下にも私の態度が伝わり、そして部下への「勇気づけ」への一歩となる出来事でした。

「勇気づけ」と「ほめる」の違い

また、いわゆる「ほめる」というのは、人間関係において、良い・悪い、という評価基準をベースとしており、タテの関係が生じてしまっているため、「勇気づけ」とは異なります。

人間関係においては、無意識に相手を支配したり、上下関係を抱く時もありますが、このタテの関係ではなく、ヨコの関係、すなわち対等の関係を築き、お互いを認め、尊重することで、「勇気づけ」ることができます。

「勇気づけ」を実践する方法は?

では、具体的に「勇気づけ」を実践する場合、どのようにしたら良いのでしょうか?具体的な方法を下記に説明していきたいと思います。

相手の良かった点を伝える

まずは、相手の良かった点を伝える、ということです。
ダメだった部分ばかりを指摘されると、相手の心は疲れてしまいます。

例えば、夫婦間で、洗濯を干す家事を手伝ってくれた夫に対して、
「洗濯を干すときは、もっとシワを伸ばして干してね!」
とダメ出しするのではなく
「忙しいのに、短い時間で洗濯を干してくれたのね。その間に娘のおもちゃを片付けられたわ、本当に助かった!」
と良かった点を伝えるということです。

また、上司部下の間で、クライアントへの提案資料を作成した部下に対して、
「こんなに文字が多いと、見にくいよ。」
とダメ出しするのではなく
「たくさん調べて、提案してくれたね。忙しい中、手を動かしてくれたおかげで、こちらが調べる時間が省けたよ。ただ、少し文字が多いから、一緒に一つずつ見て添削していこうか。」
など、良かった点を伝えてから改善してほしいポイントを伝えることも大事です。

この時のポイントは、具体的には、「ほめる」というよりも、相手の行動によって、自分がどう助かったかを具体的に伝える、ということが大事です。

そうすることで、相手に活力を与え、自主性やモチベーションを上げることにも繋がります。

プロセス重視

次に、「プロセス重視」するということです。

失敗は成長のための糧、とも言いますが、結果だけを見るのではなく、相手がその取り組みをするまでの過程や努力に注目する、ということです。

まずは相手が何かしようとしたことに対して、認めることが大事です。

例えば、子どものテストの結果が帰ってきて、それが100点だった場合

「すごい成績ね!すごい良い成績。素晴らしい。」
ではなく
「○○が頑張ったんだね。努力したんだね。おめでとう。」

と伝えることです。

上記のように、結果が良い悪いで判断するような言葉ではなく、その結果に至るまでの相手の頑張りや努力を認めてあげることで、相手は信頼してもらえていると感じることもできますし、また次も頑張ろうとやる気を起こすことにも繋がります。

感謝

最後に、「感謝」を伝えるということです。

相手に対して、「すみません」と謝罪の言葉よりも、「ありがとう」と伝えることを大事にします。

まとめ

アドラー心理学の「勇気づけ」を実践することで、人間関係をよくしていく方法をお伝えしてきました。

会社の上司や部下、子育てや夫婦、両親などの家族、また友人などとの人間関係相手を尊敬・信頼することが難しいと思うこともあるかもしれません。

しかし、アドラーは、相手の存在そのものに敬意を払うということが、無条件で相手を信頼・尊敬するということに繋がるとしています。
「仕事でミスをするから信頼できない」や「卒業した大学のレベルが低いから尊敬できない」という条件で相手を信頼・尊敬するということではないということです。

皆さんも、未来の一歩のために、是非周りの人間関係で「勇気づけ」、実践されてみてはいかがでしょうか?